キルトはスカートじゃない

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Junzyはどうしてキルトを着てるの?

遠い昔の学生時代に半年間アメリカワシントン州に短期留学いたしました。
その際にホームステイでお世話になったのがスコットランド移民のMcRadyマクラディ家です。
滞在中に一家に連れられてスコットランドの運動会的なお祭り「ハイランドゲームズ」に参加させてもらいました。
「ハイランドゲームズ」とはスコットランドの民族衣装を身に着けて、太棒投げやハンマー投げなどの重量競技、徒競走などの陸上競技、バグパイプやドラム演奏、ダンスのコンテストなどを行う伝統のお祭りです。本国だけではなく世界各地で実施されています。ちなみに日本でも幕張と神戸で毎年行われています。
バグパイプの楽隊のキルトはテレビでも見た事あったので驚きませんでしたが、狩や戦闘着である本来のキルト姿は始めて観たので驚きと衝撃を受けました。10代の多感な時期に、かわいらしいタータンチェックのスカートを巻いた男たちが力比べや格闘技などをしている様は自分の常識、価値観、文化の考え方を覆すものでした。
世界には自分の知らない伝統文化があるんだなと感心したわけです。

ハイランドゲームズ


日を別にしてマクラディ家のおじいさんのハッピーリタイヤパーティーで、正装としてのキルトを着させてもらいました。
これがまたエレガントでスコットランド民族衣装の奥深さにすっかり惚れ込んでしまいました。

正装


半年の滞在期間が過ぎマクラディ家の皆さんとお別れする日です。
なんとマクラディ家のタータンキルトをお土産に頂いたのです。これは大変光栄なことです。
タータンチェックは日本の家紋と同じで各氏族ごとにチェックのパターンが登録されている格式高いものです。
感謝と感動のお別れでした。
スコットランドの伝統文化を日本に伝えることを約束して帰国した訳です。

そうは言いましたがね、若い頃はやはり恥ずかしさが先に立って、日本ではキルトを着る勇気がなかったですね。。
そう、だいぶ人生重ねてからですかね。。日本で行われた「ハイランドゲームズ」に思い切ってキルト着用で見に行き、久々にキルト着用のスコットランド人、日本人に会ってお話してしたりイベントに参加しているうちに恥ずかしさは吹っ切れました。
精神的に大人になったんですね。。w
そして、あの時の約束を果たそうと思い、当初はライブとかで着ていたのですが、うちの会社の役員と飲んでいる席でこの話をしたら、「いいじゃない着て来ちゃいなよ!」とまるでジャニー喜多川的な軽い乗りで承認してもらってからはすっかり普段着です!

キルトって何?
スコットランドの民族衣装 キルト
キルトはスカートとは違い日本の着物や浴衣と同じようにれっきとした男性用のボトムです。
僕が「履いてるのはキルトだよ」と言っても、「でもスカートなんでしょ」とかよく言われますが、浴衣は浴衣でしかないようにキルトはキルトでしかないのです。

元々のキルトは「タータン」織りの1枚の大きなウール地をお腹にあたる幅の分だけを平らなままにしておいて両腰からお尻にかけてはプリーツにたたみ、ベルトでウエストに固定して、余った部分を肩に回してピンで留めたものが発祥とされています。

古来のスタイル 縫ってない1枚布です


現在のキルトは、ウェスト位置のベルトから下の部分をプリーツが取れないように腰骨の辺りを縫いつけて固定したたものです。
全周囲のプリーツではなくお腹にあたる部分はプリーツなしのエプロンになっていて両端のエプロンが前身ごろで重なりあいます。
左右に太めのベルトが付いていて腰骨に強めに締めて固定します。

キルトはスコットランドや世界中のスコットランドからの移民の間で今も着られている民族衣装で、公的な行事、結婚式やパーティー、学校行事では多くの男性が正装としてキルトを着用しています。スコットランドの伝統的な楽器「バグパイプ」を演奏する時も演奏者はキルト着用が基本です。
軍服、学校の制服など最低1枚以上は皆持っているはずです。
サッカーやラグビーの代表戦などはスコットランドサポーターの多くはキルトを着用しています。

子供・学校の制服


サッカー・ラグビーのサポーター


軍隊・楽隊


街の人々

タータンって何?
「タータン・チェック」とよく言いますが「タータン」は布地の柄というよりも、氏族ごとに定められた家紋に相当する模様の総称なのです。
基本上下左右が対象になった連続模様で家紋といってもひとつの氏族にタータンはひとつだけではありません。
その家系の人ならだれでも着用できるクラン・タータン、ドレス・タータン、ハンティング・タータンなど無数のバリエーションがあります。
団体や会社でタータンを定めているところもあり、軍隊の場合には連隊ごとに固有のタータンを持っています。
タータンはスコットランドのタータン協会で承認登録管理されていて、伊勢丹のチェックもここにちゃんと登録されています。


Scottish Tartans Society:
http://www.scottish-tartans-society.co.uk/

キルトとキルトスカートの違いは?
女性用の「キルトスカート」と呼ばれているものは、男性用のキルトを模して作られたもので大きな違いがいくつかあります。
キルト風に作った物なので、あえて向きなどを変えたようです。
・巻きの方向
★キルト風スカート 左前
☆キルト 右前

・バックル位置
★キルト風スカート 腰の前方
☆キルト 腰の後方

・プリーツの深さ、数、布の量。
★キルト風スカート
プリーツの深さ1㎝~3㎝、ひだの数10枚前後、布の量2~3m
☆キルト
プリーツの深さ5㎝以上、ひだの数20~30枚、布の量8m~13m

キルトはものすごく重くて腰回りのプリーツ部分はかなり分厚いです。
プリーツの折り方には2つの種類がありますが、一般的にはタータンのパターンが崩れないようにたたみ、プリーツの状態でもタータンの模様がわかるものと「ミリタリー・プリーツ」と 呼ばれているもので軍服に使われるタータンのセットの縦模様に沿って折っていくたたみ方で縦のストライプ模様になりプリーツの状態ではタータンの模様は分からなくなります。折る位置を変えるだけで違った表情を作ることができます。

☆キルトの着こなし
キルトの丈は膝を少し見せる位置が男らしいとされていて、伝統行事ではもっと短めの丈を良しとする場合もあります。
結構短い丈なのです。

ちなみに現代では軍服用のキルト、正装のキルトの他にカジュアルキルトと称して気軽に着れるスタイルのものがたくさん出てきています。プリーツの深さが浅く布が少なめで軽いものや、チェックではなく無地のもの、ウールではなく綿や麻、デニム、革などで作られもの、巻の向きを気にしないもの、2枚のキルトを左右から巻いてレイヤードにするなどファッション性重視のものも多く見られます。
どこの国でも伝統文化とその進化版は存在するようですね。

キルト関連の物って、個人輸入をする以外になかなか日本では売ってないので、僕の着ているキルト、カジュアルキルトは、ほとんど手作りかリメイクです。
元々裁縫が趣味ではあったのですが、キルト作り始めてからはすっかりプリーツ職人になりましたねw

余談ですが、どうも日本人は個性に対して寛容でないというか、自分の知識の許容範囲外を一応に「おかしな人」と思う人が多い様で、露骨に指を差されてコソコソされます。全然気にもしていないのですが、親が子供におかしな人がいるよと指をさして笑ってる場面に出くわしたこともあります。こんな親に育てられた子はかわいそうだなと個人的には思っております。子供には知識と個性の引き出しを増やしてあげてほしいな。。。

女子の学校制服って不思議ですね。。
セーラー服は元々英国海軍の軍服ですし、チェックスカートもスコットランド陸軍の軍服から転用されたもので、両方とも男性の戦闘着だったんですからね。

おまけで小さい子供たちのキルト



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百聞は一見に如かず